「ヴェニスの商人」俳優を愉しむ映画として佳し。シャイロックが気の毒に見えてくるのはA・パチーノならではかもね。 - Happy?おちゃのま*しねま - 楽天ブログ(Blog)
監督・脚本: マイケル・ラドフォード
原作: ウィリアム・シェイクスピア
撮影: ブノワ・ドゥローム
衣装デザイン: サミー・シェルドン
編集: ルチア・ズケッティ
音楽: ジョスリン・プーク
俳優: アル・パチーノ( ユダヤ人高利貸しシャイロック )
ジェレミー・アイアンズ(商人アントーニオ )
ジョセフ・ファインズ(アントーニオの親友、 バッサーニオ)
リン・コリンズ(バッサーニオの妻となる ポーシャ )
ズレイカ・ロビンソン(シャイロックの娘 ジェシカ )
チャーリー・コックス(ジェシカの恋人ロレンゾー)
クリス・マーシャル( バッサーニオの友人、グラシアーノ )
ヘザー・ゴールデンハーシュ(グラシアーノの妻となる侍女 ネリッサ)
ヴェニス。ユダヤ人ゲットーで暮らすシャイロックはしたたかな高利貸しとして
忌み嫌われてはいたが、彼の金の力を借りるキリスト教徒は後をたたない。
バッサーニオは放蕩の限りをつくし、財産をすべてつかいはたしてしまった。
このままでは破産である。親友のやり手の商人アントーニオに、ある計画を打ち明ける。
ポーシャという美人が親の莫大な遺産を相続し夫選びの最中だという。
彼女の身も心も財産も我がモノとするために、体裁を整えて求婚に向かおうというのだ。
アントーニオは、快く準備資金の調達を引き受ける。
だが、商人である彼自身の財産は、現在すべて船に乗せて海の上である。
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そこで、シャイロックにアントーニオが借りてやることにする。
ユダヤ人を忌み嫌うアントーニオがどのツラ下げて金を貸せというのかと
シャイロックは怒り心頭。貸してはやるが、保証人のアントーニオに、
期限内に返せなかった場合、心臓近くの肉を1ポンド切り取る、という恐ろしい約束をさせるのだった。
財産を失うはずなどないと自信満々、かつ大親友の手前断れないアントーニオは
シャイロックの申し出を受けた。
バッサーニオはアントーニオが用意してくれた金で美しく着飾り、豪華な船でポーシャの元へ。
彼女に選ぶ権利はなく、父親の遺言で3つの箱の中から1つ正解を選ぶことになっていたが、2人の求め合う恋心が功を奏したか、見事、結婚にこぎつけるのだった。
だが、ヴェニスから絶望的な手紙が届く。
アントーニオの4隻の船がすべて沈没、破産してしまったのだ。
約束の期限は過ぎていた。ポーシャの財産で、金を倍でも用意するのはたやすいことであった、だが、シャイロックの目的はユダヤ人を蔑むアントーニオへの復讐だ。
シャイロックは娘にキリスト教徒と駆け落ちされ、財産も娘に持ち逃げされ、
完璧にキレていた。大真面目で包丁を研ぎ始める。
裁判が開かれることに。
才女ポーシャは、侍女をともない男装をし、若き法学者として裁判に乗り込むのだった・・・。
アントーニオは覚悟を決めうなだれている。
バッサーニオはありったけの憎悪をシャイロックにぶつけ、また金ならいくらでも払うと申し出るのだが・・・。
って、古典をかなりしっかりと映画化していますので、目をむくような斬新な解釈や
現代に移し替えたようなものはありませんので、物語のラストも原作通りです。
リスク差は何ですか
豪華ですねぇ。衣装も俳優も。
シェイクスピア好きでアル・パチーノのファンなら観ないわけにはいきません。
あの狡猾で強欲で醜いというイメージのあるシャイロックを美男子のアル・パチーノがどう演じるか楽しみでした。
でも、シャイロックは演じる人によってかなり違うのですよね。
わざわざ、冒頭に、「ユダヤ人は差別されゲットーに押し込められ、日中ゲットーの外を出歩くときは赤い帽子を目印に被ることを義務づけられた」とかテロップが入ります。これでもう、映画の方向性は決まったようなもんです。
差別されるがゆえに守銭奴になり頑迷になった気の毒なユダヤ人と、遊び暮らすばかりの狡猾な怠け者キリスト教徒という図式が見事に映像化されています。
目新しいといえば、そこなんでしょうね。
どう見てもシャイロックが悪役に見えてこない。
哀れな頑固爺が滑稽なまでに気の毒になってくる。
セリフはオリジナルにおおよそのところ忠実であり、ありもしないシーンや展開を付け足してはいないと私の記憶だと・・・。
ということは、映像、編集によるイメージにかかってくるわけです。
本来、貞淑な年若き才女ポーシャが、なかなかやり手の薹のたった狡猾な悪女にも見える。
友情に篤い働き者のアントーニオが、ふけばとぶよな、人生にくたびれたおっさんに見える(ジェレミー・アイアンズ、グッジョブ!)
バッサーニオのダメ坊っちゃんっぷりはイメージそのままか。
重要なのは、バッサーニオが脳天気な美形であることです。ジョセフ・ファインズ、まさにはまり役でしょう。
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で、個人的に拍手喝采だったのが、クリス・マーシャルですよ。
私、このヒト好きでたまりません。グラシアーノなんてオイシイ役もらっちゃいましたねぇ。「ラブ・アクチュアリー」で米国ギャルにモテまくっていた英国青年役が記憶に新しいところですが、今回も何もしてないのに一目惚れされる(美形じゃないのにぃ)んですな。グラシアーノは恋の使者ですから妖精の王子のように美しくあってほしいものですが、ズレててウケました。
高利貸しですが・・・
当時、キリスト教徒にとって金儲けは恥ずべきことでしたから、
汚い仕事(でも金貸しって誰かやらないとキリスト教徒も困るのよ)はユダヤ人にやらせて、差別していたというのは資本主義の歴史の中でもう隠しようのない事実。
人種差別に耐えかねて、という側面をこれだけ全面にバリバリに出して、
演説させたら右に出るもののないアル・パチーノにやらせたというところが、
この映画のウリなんだと思います。
そこが好きか嫌いかというと、ちょっとビミョーではあります。
だって誰もその後、「人種差別して悪かったなぁ」なんて反省しません。
シャイロックは無惨なまでに敗北し、その上慈悲までかけられてしまう。
勝ち誇るキリスト教徒たち。
うーん、何がしたかったんだ?という気は正直してしまいますが、
シャイロックの惨敗した姿は哀れでもあり可笑しくもあり、よかったかな。
ところでですね。
わたくし、この映画の斬新な解釈を考えてみましたことよ。
誰が演出しても、アントーニオのラストシーンってえらい寂しいじゃないですか。
カップルがそれぞれ寝所にいちゃいちゃしながら消えていき、応接間に取り残されるシーンですね。
劇中で、アントーニオとバッサーニオが友情にしてはアツすぎるキスシーンを披露してくれてました。アントーニオはもしかして、あの年で独身だし、バッサーニオにラブだったりしてな。あの2人の年齢差をここまでとってしまう演出も珍しいでしょ。
そー余計なことを考えると、ぽつねん、と残されるアントーニオの背中がさーびーしーくーてー、泣けます(本当かよ)。
ま、破産もしましたし。
というわけで、この映画、基本的にシェイクスピアが好きな方、
好きな俳優が2人以上いる方、あたりに強力におすすめしたいです。
そうでもない方には、向かない気がしますので(^^;)
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